城めぐり ~土の城の最高傑作 杉山城

「土の城の最高傑作」、「築城の教科書」と名高い杉山城を訪問してきました。

お城の概要


公共交通機関ユーザーにはなかなか行きにくい距離ですが、技巧に富んだ多彩な防御機構が見られ、片道40分歩く価値がある城です。15世紀頃に山内上杉氏によって築かれたようですが、上杉氏の他の城には見られない高度な築城技術が用いられており、後北条氏の城という説も出ています。鎌倉街道を見下ろし、西は市野川に接する丘陵を丸ごと一つ縄張りとしています。比較的コンパクトな城ですが、色々見て回るのが楽しいので、駅との往復含め3〜4時間はみておきたいところです。なお杉山城は私有地で、持ち主の御厚意で整備・公開してくださっているそうです。大変ありがたいですね。
f:id:yuki_shiro:20190428150526j:plain:w400

見どころ

いくつも用いられた防御機構が見どころです。積善寺の裏手にある大手口から上がっていくとまず、外郭と南三の郭に出迎えられます。案内板を用意してくださっているので迷わずたどり着けます。見づらいけど縄張り全体図の入った案内板です。
f:id:yuki_shiro:20190428151609j:plain:w400
外郭には折れを持つ土塁があり、かなりの急角度と高さがあります。よじ登るのはまず不可能です。
f:id:yuki_shiro:20190428150315j:plain:w400
外郭から南三の郭に行くには、深い空堀を超えていく必要があります。ここには木橋がかかっていたらしいのですが、有事には橋は取り外せる構造だったようです。仮に木橋がかかっていても、位置的に南三の郭から見下ろされる構造のため、渡ろうとすると側面から横矢がかかってきます。
f:id:yuki_shiro:20190428153732j:plain:w400
本郭に入るまでのルートは、ほぼすべて正面と側面から攻撃を受けるようになっており、なかなかえげつない城です。南三の郭から南二の郭に入る際も食い違い虎口という防御機構が設けられています。
f:id:yuki_shiro:20190428150833j:plain:w400
見通しが悪く、二の郭に入るまでに何度か体の向きを変える必要もあります。
f:id:yuki_shiro:20190428150857j:plain:w400
井戸郭の井戸には今でも水がわいており、当時から水の確保はしっかりなされていたことがうかがえます。
f:id:yuki_shiro:20190428151153j:plain:w400
井戸郭から本郭に入るルートが設けられていますが、ここも木橋で、やはり有事には取り外せる構造だったようです。深い空堀が設けられており、本郭の土塁上から側面攻撃がかかるようになっています。今は空堀への転落防止のため柵が設置されていました。
f:id:yuki_shiro:20190428153243j:plain:w400
本郭は広い平地が設けられています。周辺一帯を見下ろすことができ、日光男体山まで見えるとか。当時はもう少し木を伐採していたと思うので、周辺の街道の様子などもばっちり見渡せたでしょう。
f:id:yuki_shiro:20190428153143j:plain:w400
本郭の東には、東二の郭、三の郭が設けられています。こちらは傾斜もなだらかで防御も比較的ゆるめでした。北には北二の郭、三の郭が設けられており、こちらは土塁がしっかり作られていました。
f:id:yuki_shiro:20190428152556j:plain:w400
杉山城は遺構がしっかり残っており、しかも分かりやすいよう図解豊富な看板が用意され、おもてなしを感じられる城でした。公開してくださっている所有者の方や整備してくださっているボランティアの方、本当にありがたい限りです。

今回の城めぐりには、こちらの本を参考にしました。著者の城好きの熱量が伝わってきて、思わず城めぐりをしたくなる一冊です。