JaSST Kyushu初参加!今回はテーマなし、とのことですが、緩やかに関係性とチーム、開発とテストのお話です。
「チケットシステムで理解するあのチーム」
(関さん、miwaさん)
あのチームの紹介
- テストを中心とした反復開発のチーム、20年近く続いている
- セーフティクリティカルのシステムを開発している
反復開発
- V字モデルを何度も何度も繰り返すやつ
すべての活動をテストする
- 実装、仕様、要求、作り方
- テストは終端ではなく発端
- すべての活動を「くり返し」できるように
あのチームの特徴
- 非常に大きい
- 組織変更と関係なく長生き
- Wikiの規模は約9万ページ、毎日1000ページが編集
- チケットシステムは非常に長生きしている(結果として長生きになっただけ)
1. チケット編:チケットは仕事の一つの単位
2. インデックス編:大量にあるチケットをどう扱うか
3. 朝会編:どう観察しているか
1. チケット編
- 前提:ワークフローが変わるもの(変化を促す、邪魔しない)
- サマリ:一行で表す「できること」、自分たちが分かれば十分、分からなかったら誰か突っ込むからいいかな
- チケットの種類
- story、bug:触って確かめるテストを書く
- task:システムの変化がないもの
- 状態
- openとcloseだけ
- 見積もり
- あと何日かかりそうか、何日かかったか
- 順調なのか、困っているのか、いつ試せるのかにフォーカス
- あのチームでは、納期を約束させたり速度を競ったりはしない
- 忍者式テスト
- すべてのチケットにそれを確認するテストを書く
- 毎日テストする、テストが増える
- 試した人結果を記録
- 履歴のすごいものは2003年のチケットが見直されたりする
- テストスイートを日単位で全部網羅するのは不可能
- →、1ヶ月とかで見たら網羅できるように今日のテストスイートを出せるアルゴリズムをシステムに組み込んだ
2. インデックス編
チームがどの製品、バージョンに集中してるかわかる
3. 朝会編
朝会で考えること
- 「この製品を変更するべき」かの表明、どう変更しようと思っているかが問われる
- 朝会は45分、延長なし
- 朝会で使われるインデックスページは壁と付箋に似ている
- 物理ではできない、過去のチケットの更新とか過去のチケットを見る習慣ができる
感想
チケットシステムを通して、あのチームのやり方やどうしてそうなっているのかがわかる紹介でした。チームが必要としている状態にフォーカスしていく様子が分かって、結果として長生きしていることが納得できました。チケットシステムの機能を、あえてチームに必要なことに絞って、他への報告に必要な機能を削いでいるのがすごいなと思います。「他への報告が求められないのは、チームがしくじってないから」というあのチームがカッコよすぎる。
「フレーズで体験するあのチーム」
問題を解決していく最中に起こる「小さな会話」が「良いチーム」を作るのではないか
フレーズ
- 「うまくいったらどうなるの?」
- 「見せて」
- 「ワザと?」
- 「わかんない」
「うまくいったらどうなるの?」
どこまでうまくいってて、どこから分からないかが明確になる。ゴールが明確になる。ゴールが明確になってない場合は、ゴールが明確になってない状況が分かってみんなで解決できる。どこまでも間違ったまま行くことがなくなる。
「うまくいったらどうなるの?」ポジティブな問いかけの言葉。またテスト可能。「なんでこれやるの?」だと上からになりがちだし、答えづらい。
「見せてー」
製品でもコードでも現物を見ることを大事にしている。見ると放っておけなくなる。みんなの自分事になる。
途中のものを見せるのがストレスになる人もいる。ただ、印象としては見せた方が楽になる人の方が多そうに見えるらしい。
※JaSST Kyushu実行委員ははZoomの画面共有で「見せてー」をやっているそうです。
「ワザと?」
制約や思い込みを取り外して考え始める。本来あるべき姿や理想。
おかしいと思っているけど、おかしいと言いづらいときや、混乱しているように見えるときに使える。
理想的な対策ではないけど、時間内では許容範囲な対策などを行い、その後「時間内では許容範囲な対策」だったことが忘れ去られた場合とかに使える。
「ワザと?」はチームに対する問いかけ。自分自身への問いかけにも使える。本当は自分は気に入らないけど、他からの強い要望があった場合とかに本音を言いやすくなる。
「ワザと?」はちょっとキツく感じる言い方なので、ニュアンス同じでもっと柔らかい言い方ないかなー、とつぶやいたところ2案いただきました。
- @shimashima35さんから「それは意図通り?」
- @YasuharuNishiさんから「なにか思うところがあったりしたんじゃない?」
「わかんない」
瞬時に自分の違和感を伝えられる。なぜわからないかをみんなが一斉に考え始められる。たいていの場合、課題(問題)が見つかる。
みんなわかってるけど、わからないときなどに使える。
このフレーズを使えるまでには時間がかかるので、新人が入った場合は、3か月くらい一人にさせないとか、「自分がわからなくて自分の時間を無駄にすると、チームの時間を無駄にする」意識の浸透などの前提が必要そうな印象を受けた。
感想
最後の「明日からできそう?」という問いかけには、「見せてー」とか逆に「これ見てー」あたりはできそう、「ワザと?」はニュアンスは分かったけど自分やチームになじむフレーズにするにはちょっと時間が必要そうかな、というのが今のところの自分の答えです。チームで成果を出すということに、チームがフォーカスする文化と一体のフレーズな気がするので、自分のところの文化になじませるには、自分の言葉や言い方をできるよう調整が必要な気がしてます。案をいただいた2つも、誘導尋問にならないようには注意して使おうと思ってます。
「オンラインコミュニケーション時代における日本語文章の書き方 ~チーム内とチーム外のコミュニケーションで気をつけること~」
町田さん
日本語の書き方に取り組むようになったのは、仕事でのレビューがきっかけ。日本語が好きなので、間違いが気になってしまう、自分が気になることを共有することでレビューの負担を減らしたい、もきっかけ。
文書は残せる点がメリットだが、間違うと間違えたまま残るのでディスコミュニケーションの元になる。
少人数チームによる開発では不完全な文章でも伝わるなどで、文章を書く機会は減る。ただ、付箋やホワイトボードを含め、正しく書くことの重要性は高い。
町田さんの3つのポリシー
1.読み手の立場に立つ
2.一字一句に魂を込める
3.できるだけ書かない
→コードを書かなければバグは生まれない
心がけていること7点
- 読み手によって求めることが違う
- 読み手によって好む文章が違う
- 背景を伝える
- 簡単な言葉を使う
- ごちゃごちゃした文章(文書)は読む気がなくなる
- 文章は読まれない
- 簡潔に書く
実践している7つ+1つ
- 何度も読み返す
- 真似をする
- 意味を調べる
- 類義語を調べる
- 校正ツールを使う
- 頭を冷やす
- 俯瞰する
- 英語に翻訳する
- 翻訳して意味が通じなければ、ややこしい日本語
こだわっている7つのこと
- 係り受け
- 主語
- 長文
- 指示代名詞
- 否定文
- 専門用語
- 助詞
感想
オンラインだろうと文章を書くことは必要なので、分かりやすい文章を見直すきっかけになりました。実践している7つのところで、プラスとして言われた英語に翻訳する、は確かにそうだなと感じました。翻訳しにくい日本語は、その時点で長文すぎたり、主語が抜けてたりして、実際読みにくいです。場面に応じて、町田さんが気を付けてることや実践していることを真似させてもらいます!
ふりかえりタイム
ふりかえりタイムをとってもらえるのが理解の促進になって、ありがたかったです。フレーズのところの質問で「NGワード」についての質問が出たのがすごくよい質問で、自分には思いつけなかったし、あのチームがフォーカスしてることをより深く知れるきっかけになりました。「生産性」とかはあいまいなんですよね。
おまけ
実行委員の方が周辺のランチマップを公開してくれたり、テスト酒場の方が前夜祭と懇親会を企画してくださったりと至れり尽くせりでした。どれも美味しかったです!
前夜祭の二次会で食べた「土竜が俺を呼んでいる」の梅塩とんこつラーメン。
ランチの「とんかつ若葉」さんの低温でじっくり上げたとんかつ。
懇親会の「だるま屋」さんのごまサバ。刺身もほかの料理もすごくおいしかった!
登壇者、実行委員、参加者の方々ありがとうございました!関係性とチームについて改めて考える機会をいただきました!